山梨県 勝沼砂防堰堤

勝沼砂防堰堤(かつぬまさぼうえんてい)の概要
日川(ひかわ)は山梨県甲府盆地の東部に位置し、東山梨郡大和村・勝沼町・一宮町を流下し
笛吹川に注ぐ、流量延長27.0km、流域面積108.3km2の一級河川。
流域の上流部を閉める花崗閃緑岩は風化に伴う崩壊が多いうえに、
中流部の瀬戸川層群は主として粘板岩、頁岩層よりなり、浸食、崩壊が多い。
このため氾濫する頻度が高くしばしば水害が頻発していました。
そのなかで、明治40年には大水害が発生し日川村は甚大な被害をうけた。
これをうけ、明治44年より内務省直轄砂防事業として勝沼砂防堰堤工事に着手。
勝沼砂防堰堤は大正6年に竣工
日本で最初にコンクリートを使用して築造された芦安砂防堰堤の工事前年に
基礎の一部にコンクリートを採用、その施工実績により芦安堰堤にコンクリートが採用された。
このような経緯から平成9年5月に登録文化財となった。
三日間のダム巡り中に偶然見つけた砂防堰堤(さぼうえんてい)
砂防堰堤は名前の通り砂の流出を抑えるのが役目なので貯水機能はありません。
よってダムではありませんが、砂防堰堤はダム湖への砂の流入を抑制したり、
水害を防ぐなど重要な役割を担っています。
勝沼砂防堰堤は河道を石積み堰堤で遮断し、蛇行点に突出した岩盤の後部を掘削して河道にし、
堰堤幅39m・岩盤上河道幅46m・堤高19mという現在でも大型の特異な構造の堰堤。
堰堤本体は裙を大きく広げた空石積みで構造としては古いのですが
基礎の一部にコンクリート壁を使用し、水に接する部分に目地止めが行われていること、
岩盤に通水穴を設けること、直壁岩盤に流路を設けウォータークッションと同じ効果を持つことなど、
技術転換期の遺構と言え、前年に完成した下流の日川水制とともに用いられた新技術が、
後の砂防施設へと受け継がれている。
※参考文書より一部抜粋

そんなわけで登録有形文化財にも指定されています。
国民の財産ですよみなさん!!

堰堤付近はきれいに整備されて堰堤を楽しめるちょっとした公園となっています。
こんな感じのところがうちの家の近くにもあれば良いのに・・・。

駐車場なんかもあったり、堰堤をゆっくりと眺めることのできる設備が充実しています。
ヘタに観光地化されたダムよりもゆっくり堰堤を楽しめる場所だと思いました。

ここからゆっくりと四季おりおりの堰堤の姿を楽しむことができます。
国道20号線の脇、渋滞で疲れた時に気分転換でちょっと立ち寄って一服なんてのも良いかも♪
豪快な水音も、ここからだとマイナスイオン出まくりの心落ち着く優しい水音になっています。

建設当時のことや貴重な写真などが展示されています。


大正6年の竣工当時の貴重な写真
92年の時と経て埋没した箇所を発掘し、損傷箇所を補修した現在とは異なり
竣工当時はとても機能的で整った堰堤だったことがうかがえる。

明治44年の日川水制群工事写真
若干解り難いが服装に注目してほしい。 調査員はスーツ姿で作業員は作業服。
写真では解り難いが、これだけの先進的な技術が持ち込まれた堰堤だけに
外国人の調査員だったのかも知れない。
当時は全てにおいて外国の先進技術が急速に日本に入り込んだ時代であり、
今では信じられないほどのスピードで技術革新を繰り返した時代でもある。
=日本の土木事業の影に外国人の姿あり=なのである。
これらの貴重な写真から、しばし当時に思いを馳せる。

現在の堰堤左岸
空石張りの堰堤も発掘された後に大きく改修された。
現在では景観こそ異なるものの、とても整備が行き届いてる感がした。

上流側の堰堤
増水時でも通常ここまで水位が上がることはないが、異常時にはここまで水位が上昇することがある。
金網でまとめられた石は近代の透過式砂防技術の流用?

堰堤左岸にはブドウ畑。 発掘前の堰堤左岸部はブドウ畑になっていた。

ブドウを見る。 6月下旬ではまだまだ時期早々のようである。

発掘・改修時の空撮写真
中央の記念樹?の左側はロックフィル的な構造であり92年の時の中で埋没していた箇所
現在とは流水路が異なる。 右岸補修のために水路を変更していたのだろうか?

堰堤中央の記念樹?の幹の位置を見る限り、大正6年の竣工時の木であることが解る。
当時の貴重な写真に写る木が成長し今目の前に存在してるというのは感慨深いものがある。

記念樹?の位置から撮影
こちら側はもともと強固な岩盤であり、それを掘削して作った導水路 勝沼堰堤の一番の特徴。

堰堤の下流側に近づいてみる。
垂直な壁には通水穴があり、そこからも水を流し直上から降ってくる水にあてる事で
ウォータークッションの働きを持たせ、水圧による堰堤へのダメージを軽減させている。
表面がボコボコなのは掘削がいい加減だったからではなく緻密な計算によるものなのです。

今回たまたま通りかかった勝沼砂防堰堤 ダムとは違う独特の魅力を感じました。
勝沼砂防堰堤ほど大規模ではないけど、ダムをいくつか観ていくと必ず見つけることができます。
その多くは名称がついているわけではなく、番号で管理されているらしい。
また、近年の技術で水路の分断をしないで土石流だけを防ぐ透過型の砂防堰堤など、
堰堤の形状は非常にバラエティーに富んでいます。
目的のダムから少し視点を変えて名も無い砂防ダムに目を向けてみるのも楽しいかも。
勝沼砂防堰堤は永い時間の間に一部が土に埋没し、埋没箇所はブドウ畑となっていました。
復元されて観ることができるのは嬉しいけど、そのままそっとしといてあげても良かったかも?
な~んて思いました。
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ダムにはまってんだ
ダムダム
| 訪問者 | 2009/07/06 | URL | ≫ EDIT